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「納豆を炒めるとどうなるんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。
納豆チャーハンやパスタなど、加熱レシピは多いものの、納豆の加熱はだめという話も耳にします。
実際のところ、加熱による栄養の変化はどうなるのか、特有の臭いや加熱による食感(ネバネバ)はどう変わるのでしょうか。
また、炒飯をパラパラにするコツや、子供のおやつにもなる簡単なアレンジも知りたいところです。
この記事では、納豆を炒めることに関する様々な疑問にお答えします。
毎日食べるからこそ知っておきたい健康への影響や、食べ過ぎの注意点、おすすめの加熱レシピまで詳しく解説します。
ポイント
- 納豆を加熱した際の栄養素(ナットウキナーゼなど)の変化
- 加熱による臭いや食感(ネバネバ)の具体的な変わり方
- 栄養を活かす加熱調理のコツとおすすめレシピ3選
- 納豆を食べる際の適量や注意点
納豆を炒めるとどうなる?栄養素の変化を解説
納豆の加熱はだめと言われる理由

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納豆の加熱が「だめ」「もったいない」と言われる最大の理由は、納豆特有の酵素である「ナットウキナーゼ」が熱に非常に弱い性質を持っているためです。
ナットウキナーゼは、納豆のネバネバ部分に含まれる酵素の一種で、いわゆる「血液サラサラ」効果、つまり血栓(血のかたまり)を分解する作用が期待されています。
この健康効果を期待して納豆を食べている方も多いでしょう。
しかし、このナットウキナーゼは酵素であるため、熱に弱いです。
情報によれば、50℃程度の加熱からその活性が低下し始め、70℃以上になると、その働きのほとんどが失活してしまうとされています。
納豆チャーハンや納豆パスタ、納豆汁といった加熱調理は、多くの場合70℃以上、炒め物であれば100℃を超える高温になります。
そのため、これらの調理法ではナットウキナーゼの効果は期待できなくなってしまいます。
これが、「納豆は加熱しない方がよい」と言われる最も大きな理由です。
ナットウキナーゼ目的の場合は非加熱で
もし納豆の血栓予防効果(血液サラサラ効果)を最大限に得たいのであれば、加熱せずにそのまま食べるのが最もおすすめです。
熱々のご飯にかける際も、ナットウキナーZEは50℃から影響を受け始めるため、ご飯を少し冷ましてから乗せると、失活を最小限に抑えられます。
炒めることによる納豆の栄養素の変化とは?
では、納豆を炒めると、ナットウキナーゼ以外の栄養もすべて失われてしまうのでしょうか。
結論から言うと、失われる栄養素は一部であり、加熱しても摂取できる栄養素も多くあります。
納豆を炒めることで変化する主な栄養素について、詳しく見ていきましょう。
失われる・減少する栄養素
- ナットウキナーゼ:前述の通り、70℃以上でほぼ失活します。
- ビタミンB群:納豆に含まれるビタミンB1、B2、B6などは水溶性ビタミンです。熱自体には比較的強いものの、納豆汁のように煮汁に溶け出したり、長時間の加熱によって一部が分解されたりする可能性があります。炒める場合は短時間で済ませるのがよいでしょう。
加熱しても残る・安定している栄養素
- 納豆菌(芽胞):納豆菌は非常にタフな菌として知られています。自分にとって好ましくない環境(高温や低温、酸など)になると、「芽胞(がほう)」という硬い殻に包まれた休眠状態になります。この状態では100℃の加熱にも耐え、マイナス100℃でも死なないとされています。そのため、炒め物や納豆汁程度の通常の加熱調理では、納豆菌自体は生きて腸に届くことが期待できます。
- ビタミンK2:骨を強くする働き(カルシウムを骨に定着させる)で知られるビタミンK2は、熱に強い性質を持っています。加熱しても壊れることはほとんどないとされています。
- たんぱく質:原料である大豆由来の良質なたんぱく質は、加熱によって失われることはありません。
- 食物繊維:腸内環境を整える水溶性食物繊維と、便のかさを増す不溶性食物繊維も、加熱の影響をほとんど受けません。
加熱調理のメリット
ナットウキナーゼは失活してしまいますが、納豆菌、ビタミンK2、たんぱく質、食物繊維といった重要な栄養素は加熱しても摂取できます。
加熱を恐れすぎて食べ方を限定するよりも、様々な調理法でおいしく食べ続けることが健康維持につながるとも言えます。
納豆特有の臭いはどうなる?

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納豆が苦手な理由として必ず上位に挙がるのが、あの独特の「臭い」です。
納豆の臭いは、発酵の過程で大豆のたんぱく質が分解されて生じるものですが、この臭いの成分(アンモニア臭など)は揮発性(蒸発しやすい性質)を持っています。
そのため、納豆を加熱調理、特に炒めることで、この特有の臭いが飛んで弱まります。
代わりに、大豆の持つ旨味や香ばしさ(「納豆とツナの簡単ガパオ風ごはん」のレシピのように)が引き立ち、非常に食べやすくなります。
特に、ごま油やニンニク、ショウガといった香りの強い食材と一緒に炒めると、納豆の臭いはほとんど気にならなくなるとされています。
納豆の栄養は摂りたいけれど臭いがどうしても苦手、という方にとって、加熱調理は非常に有効な食べ方です。
「納豆は食べられない」というお子様や海外の方でも、納豆チャーハンや納豆パスタなら「おいしい」と言って食べられるケースは多いです。
食わず嫌いを克服する第一歩としても、加熱調理はおすすめですよ。
加熱による食感(ネバネバ)の変化
納豆のもう一つの大きな特徴である「ネバネバ」。
この糸を引く粘りの正体は、主にポリグルタミン酸という成分(納豆菌が作り出す旨味成分)です。
このネバネバした食感が好きという方も多い一方で、「口の周りがベタベタする」「ご飯と混ざりにくい」といった理由で苦手意識を持つ方もいます。
このネバネバも、加熱によって大きく変化します。
納豆を炒めると、粘り成分が変化し、ネバネバとした糸引きがかなり少なくなるとされています。
食感としては、ベタッとした状態から、サラッと、あるいはポロポロとした状態に近くなります。
この食感の変化は、特にチャーハンのような料理でメリットとなります。
ネバネバが少ないことでご飯と混ざりやすく、パラパラとした仕上がりを助けてくれます。
ネバネバが苦手な方にも
前述の「臭い」と同様に、「ネバネバした食感」が納豆嫌いの原因であることも多いです。
加熱してネバネバを抑えることで、納豆初心者の方でも食べやすくなります。
納豆を炒めるとどうなる?おすすめ加熱レシピ3選
おすすめの加熱レシピ3選を紹介

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納豆を加熱することのメリット・デメリットを整理してきました。
ナットウキナーゼを失う代わりに、「臭いと粘りの軽減」「食べやすさの向上」「レシピの多様性」といった大きなメリットが得られます。
ここでは、納豆菌やビタミンK2、たんぱく質といった加熱に強い栄養をしっかり摂りつつ、納豆をおいしく食べられるおすすめの加熱レシピを3つ厳選して紹介します。
- 納豆チャーハン
納豆の加熱レシピの王道です。加熱による臭いと粘りの減少というメリットを最も活かせます。
- 納豆チーズトースト
朝食やおやつに最適な、栄養バランスにも優れたメニューです。
- 納豆と玉ねぎのもちもち焼き
ご飯だけでなく麺類とも相性抜群。ボリューム満点のメイン料理になります。
これらのレシピは、納豆が苦手な方でも食べやすく、また、納豆好きの方には新しい食べ方のバリエーションとして楽しんでいただけるはずです。
納豆チャーハンをパラパラにするコツ
納豆チャーハンを作るとき、誰もが直面するのが「ネバネバでご飯が固まってしまい、パラパラにならない」という問題です。
これを防ぎ、お店のようなパラパラの納豆チャーハンを作るには、いくつかの簡単なコツがあります。
最も重要なコツは、「納豆を調理の最後に入れる」ことです。
パラパラ納豆チャーハンの手順
- まず、ご飯と卵、他の具材(ネギやチャーシュー、ツナなど)を使って、通常のチャーハンをほぼ完成させます。
- フライパンの火を止める直前、あるいは火を止めてから、タレと混ぜておいた納豆を加えます。
- あとは余熱でさっと全体を混ぜ合わせる程度で完成です。
この方法には2つのメリットがあります。
第一に、納豆に火が通り過ぎるのを防ぐため、ネバネバの発生を最小限に抑えられます。
結果として、ご飯がダマにならず、パラパラとした理想的な仕上がりになります。
第二に、加熱時間が最短になるため、熱に弱いナットウキナーゼの失活も(全てではありませんが)最小限に抑えられる可能性があります。
子供のおやつにもなる納豆チーズトースト
「納豆チーズトースト」は、意外な組み合わせに思えるかもしれませんが、非常に相性が良く、手軽に作れる栄養満点のメニューです。
特に、納豆が苦手な子供のおやつや、忙しい朝の朝食にぴったりです。
基本的な作り方
- 食パンに、付属のタレや醤油と混ぜた納豆を広げます。(お好みでマヨネーズを薄く塗ってもOK)
- 上からピザ用チーズをたっぷりとかけます。
- オーブントースターで、チーズが溶けて美味しそうな焦げ目がつくまで焼けば完成です。
このレシピの優れた点は、栄養面での相乗効果にあります。
納豆に豊富なビタミンK2は、骨の形成を助ける働きがあります。
そして、チーズには骨の材料となるカルシウムが豊富です。
さらにビタミンK2は脂溶性(油に溶けやすい)ビタミンであるため、チーズやマヨネーズの脂質と一緒に摂ることで、体内への吸収率が高まるとされています。
つまり、「納豆+チーズ+脂質(マヨネーズ)」は、骨の健康にとって非常に効率の良い組み合わせなのです。
味の面でも、納豆の旨味、チーズの塩気とコク、マヨネーズの酸味が一体となり、加熱による香ばしさも加わって、納豆の臭いをほとんど感じさせません。
>お手軽な納豆と玉ねぎのもちもち焼き
納豆、玉ねぎ、片栗粉だけでサッと作れるお手軽な一品。
時間がない時のご飯や、子供が食べ足りないときの一品としてとても重宝するレシピです。
毎日食べるなら健康も意識しよう

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納豆は「完全食」とも呼ばれるほど栄養バランスに優れた食品です。
毎日継続して食べることで、様々な健康メリットが期待できます。
特に注目されるのが、腸内環境のサポート(腸活)です。
納豆菌は、胃酸にも負けずに生きて腸まで届くとされています。
納豆菌自体が腸内に棲みつくことはないものの、腸を通過する間に他の善玉菌を増やし、腸内環境を整える手伝いをすることがわかっています。
さらに、納豆の原料である大豆には、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維と、便のかさを増す不溶性食物繊維がどちらも豊富に含まれています。
納豆菌と食物繊維のダブルの効果で、腸活を力強くサポートします。
食べるタイミングはいつが良い?
「朝納豆」と「夜納豆」、どちらが良いかという議論をよく耳にします。
- 朝食:朝に食べると、納豆菌と食物繊維が日中の腸の働きを活発にし、代謝アップやお通じの改善に役立つといわれます。
- 夕食:夜に食べると、ナットウキナーゼ(非加熱の場合)の血栓予防効果が、血流が滞りやすいとされる就寝時間帯にピークを迎えるため良いといわれます。
どちらにもメリットがありますが、「食べたいときにおいしく食べるのが一番」です。
ストレスなく毎日続けることが最も重要です。
例えば、「朝はナットウキナーゼ目的でそのままご飯と食べ」、「夜はアレンジを楽しむために加熱レシピで食べる」といったように、目的に合わせて食べ方を変えるのも、飽きずに続ける賢い方法ですね。
食べ過ぎには注意点も

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これほど健康に良い納豆ですが、もちろん「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。
体に良いからといって、1日に何パックも食べるのは、かえって健康リスクを高める可能性があります。
特に注意したい点は以下の通りです。
納豆の食べ過ぎによる主な注意点
- プリン体の摂取
- 納豆には旨味成分のもとであるプリン体が含まれています。
- プリン体は体内で尿酸に変わり、これが過剰になると痛風の原因になる可能性があります。
- 他の食品(特に動物性食品)に比べ突出して高いわけではありませんが、摂り過ぎには注意が必要です。
- カロリーと脂質
- 納豆1パック(約50g)のカロリーはおよそ100kcal前後です。
- 低カロリーではありません。
- 良質なたんぱく源であると同時に脂質も含まれるため、食べ過ぎれば当然カロリーオーバーにつながります。
- タレによる塩分・糖分
- 納豆本体だけでなく、添付のタレにも注意が必要です。
- タレには塩分や糖分が含まれており、1日に3パック食べれば、タレだけでかなりの塩分・糖分を摂取することになります。
- 大豆イソフラボン
- 大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造を持つため、ホルモンバランスを整える作用が期待されます。
- しかし、サプリメントなどで過剰に摂取するとバランスを崩す可能性も指摘されており、食品からも適量を心がけるのが賢明です。
注意ポイント
- 納豆に含まれるビタミンK2は、血液を固める働きを助けます。
- そのため、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)である「ワーファリン(ワルファリン)」を服用している方は、納豆を食べてはいけません。
- 薬の効果を妨げてしまうため、厳禁とされています。
これらの理由から、納豆の摂取は1日1~2パック程度を目安にするのが、健康効果を得る上で最も妥当なラインとされています。
納豆を炒めるとどうなるか総まとめ
最後に、納豆を炒めるとどうなるか、この記事の要点をリスト形式でまとめます。
まとめ
- 納豆を加熱すると熱に弱いナットウキナーゼは失活しやすい
- ナットウキナーゼは50℃から活性が低下し70℃以上でほぼ失活する
- 納豆菌(芽胞)は熱に強く100℃の加熱でも耐えるとされる
- 骨を助けるビタミンK2も熱に強く加熱しても摂取できる
- たんぱく質や食物繊維も加熱で失われることはない
- ビタミンB群は水溶性のため長時間の煮込みなどでは失われやすい
- 納豆を炒めると特有の臭いが弱まり香ばしくなる
- 加熱するとネバネバ感が減りサラッとした食感に変わる
- 臭いや食感が苦手な人こそ加熱調理がおすすめ
- おすすめ加熱レシピは「納豆チャーハン」「納豆トースト」など
- チャーハンをパラパラにするコツは納豆を最後に入れ余熱で混ぜること
- 納豆トーストはチーズと合わせると骨の健康に良い相乗効果がある
- 毎日食べることで納豆菌や食物繊維による腸活効果が期待できる
- 食べ過ぎはプリン体やカロリー、塩分の過剰摂取につながるため注意
- 血液凝固薬「ワーファリン」服用中はビタミンKが影響するため納豆は厳禁
- 健康的な摂取目安は1日1〜2パック程度とされる
「納豆を炒めるとどうなるか」という疑問について、栄養の変化や調理のメリットを解説しました。
熱に弱いナットウキナーゼは熱で失活してしまいますが、納豆菌やビタミンK、たんぱく質は加熱しても摂取可能です。
何より、臭いやネバネバが減り、チャーハンやトーストなどで食べやすくなるのは大きな利点と言えるでしょう。
ナットウキナーゼを摂りたい日は生で、腸活や骨の健康、またはアレンジを楽しみたい日は加熱レシピで。
このように目的別に賢く使い分け、納豆の持つ栄養を毎日の健康づくりに役立ててください。